【管理会計】税理士が解説!中小企業のための管理会計とは

~税務会計だけで会社は強くならない~
会社経営において「数字は苦手だから税理士に任せている」という経営者の方は少なくありません。
しかし、決算書や申告書を作るための税務会計だけでは、会社の未来を判断するための情報としては不十分です。
そこで重要になるのが「管理会計」という考え方です。
管理会計は、法律や税法のための会計ではありません。
経営者自身が意思決定を行うための会計です。
本記事では、税理士監修の立場から、中小企業が管理会計に取り組むべき理由と、実務で活かしやすい具体的な手法について解説します。
管理会計とは何か?税務会計との決定的な違い
会計には大きく分けて二つの役割があります。
一つは「税務会計(財務会計)」、もう一つが「管理会計」です。
税務会計は、法人税・所得税・消費税などを正しく計算し、税務署へ申告するための会計です。法律や会計基準に沿って作成する必要があり、過去の結果を正確に示すことが目的です。
一方、管理会計は、以下のことを目的としています。
・利益が出ている原因は何か
・どの商品、どの部門が儲かっているのか
・今後、売上が下がったらどうなるのか
といった経営判断のための情報を得ることが目的です。
そのため、形式やルールは自由で、会社ごとに最適な形を作ることができます。
多くの中小企業では、税務会計=会計だと考えがちですが、「税金を計算する数字」と「経営を判断する数字」は別物だという点が、管理会計を理解する第一歩になります。
図1:目的や対象が異なる「税務会計」と「管理会計」
なぜ中小企業こそ管理会計が必要なのか
管理会計は大企業向けのもの、というイメージを持たれることがあります。
しかし実際には、中小企業こそ管理会計が必要です。
中小企業に、よく見られる特徴です。
・資金余力が少ない
・経営者の判断一つで業績が大きく変わる
・市場変化への対応スピードが求められる
つまり、一つの判断ミスが致命傷になりやすいのです。
年に一度の決算書だけを見て経営を判断していると、「気づいたときには手遅れだった」という状況に陥りかねません。
管理会計を導入することで、
・数字を早く把握できる
・問題点を小さいうちに発見できる
・感覚ではなく根拠ある判断ができる
ようになります。これは、税務のプロとして多くの会社を見てきた中で、強く実感するポイントです。
中小企業が取り組みやすい管理会計の5つの手法
ここからは、実務で特に効果が高く、導入しやすい管理会計の手法を5つ紹介します。

図2:実務で活かせる管理会計の主要な5つの手法
① 直接原価計算方式で利益構造を見える化する
税務会計では「全部原価計算」が基本です。
しかし、管理会計では「直接原価計算方式」が有効です。
直接原価計算では、2つに分けて利益を考えます。
- 売上に比例して増減する 変動費
- 売上に関係なく発生する 固定費
経営者が価格設定や販促判断を行う際に、非常に役立つ考え方です。

図3:直接原価計算による利益構造の見える化
② 損益分岐点を把握して経営の安全ラインを知る
損益分岐点とは、利益がゼロになる売上高のことです。
この数字を把握していないと、「売上は伸びているのに資金が苦しい」という状態に陥りやすくなります。
損益分岐点を知ることで、
・最低限必要な売上
・売上減少時のリスク
・固定費削減の効果
を数字で判断できるようになります。これは、経営の「安全ライン」を知る作業とも言えます。

③ 月次決算でスピード経営を実現する
年次決算だけでは、経営判断はどうしても遅れます。
そこで重要なのが 月次決算 です。
完璧である必要はありません。多少のズレがあっても、毎月数字を把握することで、
・利益の傾向
・売上の季節変動
・コスト増加の兆候
が見えてきます。
税務申告のためだけでなく、経営の健康診断として月次決算を活用することが重要です。
④ 部門別・商品別で「儲けの源泉」を知る
全社の利益だけを見ていると、問題点が隠れてしまいます。
そこで有効なのが 部門別会計・商品別会計 です。
・どの部門が利益を生んでいるのか
・赤字部門はどこか
・続けるべき事業、見直すべき事業は何か
を客観的に判断できます。
感情や過去の成功体験に左右されず、数字で判断できる点が管理会計の強みです。
⑤ 予実管理で「計画倒れ」を防ぐ
予算を立てただけで終わっていませんか。
管理会計では、予算と実績を比較する「予実管理」が重要です。
・なぜ予算と差が出たのか
・想定と違った原因は何か
・次にどう修正するか
を繰り返すことで、経営の精度が高まります。
予実管理は、経営を「反省」ではなく「改善」に変える仕組みです。
税理士の視点から見る管理会計の注意点
管理会計は万能ではありません。
数字を増やしすぎると、逆に判断を誤ることもあります。
税務のプロとしておすすめするのは、「少ない数字を、正しく使う」ことです。
最初から完璧を目指さず、
-
- 利益構造
- 損益分岐点
- 月次の推移
この3点を押さえるだけでも、経営は大きく変わります。
まとめ|管理会計は経営者のための武器
管理会計は、難しい理論ではありません。
経営者が自社を守り、成長させるための武器です。
税務会計だけでは見えない部分を補い、数字を「過去の記録」から「未来への指針」に変えてくれます。
会社の数字を正しく理解し、活かしたいとお考えの方は、ぜひ管理会計という視点を経営に取り入れてみてください。
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